近所の横田さんは酒屋を営んでいる。
店構えは酒屋さん、 しかし店内ではケンタッキーフライドチキンそっくりな唐揚げを揚げている、 それと雑誌や雑貨も少しだけ販売している。 わしは唐揚げセットの持ち帰りを所望。 少し待つていると、 横田さんが揚げたてを紙箱に詰めて持ってきた。 わしは箱の中身を確認する。 一つ一つが大きい、とても美味しそうだ。 しかも、かなりたくさん入っているのだが、 横田さんはまだ食事を摂っていないという。 仕方なくわしの分を横田さんにお裾分けすることになった。
6分の5ほど横田さんに分けることになった。 お裾分け程度ではない、むしろこっちの取り分が裾分けの量だ。 なんで客のわしが横田さんに安くない唐揚げを差し入れてるんだ。
変だ。
美味しそうなところはほとんど横田さんに持ってかれた。 まあいいや・・気持ちの整理をして無理に納得しながら分配を終えた。
わしの取り分は大きめの骨付きモモ2つと、胸一つ。
店主の横田さんは若い奥さんと所帯持ち。 分けているとき、その奥さんがお出掛けから帰ってきた。 溌溂としている人。 横田婦人とどんな内容の会話をしたか忘れたけれど、 この奥さんも後で旦那と一緒に唐揚げを食べる流れ。
わしは唐揚げの他に何かの薄い雑誌一つと文房具を合わせて購入した。 横取りされてすっかり中身がスカスカになった唐揚げの箱を両手で抱えながら店を出た。 しばらく歩いてから、買ったはずの雑誌がないことに気が付いた。
引き返して店に戻ると店内の床にそれは落ちていた。 拾ってそそくさと店を出ようとしたら横田さんに引き留められた。 お代を払っていないので窃盗なのだそうだ。 わしの中では代金を払ったつもり・・・なのだが。
実際にはお代を清算する前に床に落としたまま忘れて どうやら雑誌のお代は払っていなかったらしい。
唐揚げ入りの大きな箱で手がふさがっていたり、 唐揚げの分配に気を取られたこともあり、 落としたまますっかり失念して、すべて支払ったつもりになっていたのだ。
急に横田さんが怖い顔になる。 窃盗を強く咎める姿勢だ。 わしはその場で謝罪して雑誌のお代を払った。 それで見逃してもらうつもりでいた・・が、 微妙な空気は変わらず責め立てられるわし。 散々な目に遭ってるわし。 でも自分が悪い。
説明と説得をしてどうにか横田さんをなだめて、 商品を盗もうとしたのではない事は了承してもらえた・・・ でも微妙な空気はそのまま、横田夫妻に白い目で見られてる。 許してはもらえたけどね。
横で見ていた横田の奥さんは一切わしに加勢してくれなかった。 さっきまで友達みたいに会話してたのに、急に冷たい目になっとるの。 不人情だな、いや当然か。 やたら厳しい横田夫妻。
こっちは空腹なのに、 そこを堪えながら快く唐揚げを山盛りご馳走だってしてるのに、何の温情もない。 まるで藪から出てきた蛇に噛まれた気持ち。 重罪人になった気分のまま目が覚める。
そんな夢だった。 こんな夢を見るのは世の中が世知辛いからだ。
ちなみに横田夫妻は夢の中の住人です。 |
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